『絵』は、
風景の一部
思い出の一部
新しい世界の一部
でもあります。
祖父母の住んでいた家を
母と掃除しました。
祖父母が亡くなり
時間がとまっている家のなか
子供のころは
祖父母と過ごすこの家での時間は
私にとって別世界でした。
布団のなかで
おじいちゃんとおばあちゃんとみる時代劇
私にとってとても贅沢な時間でした。
障子をやぶってしまったときには
おばあちゃんがいっしょになって
おじいちゃんにあやまってくれました。
おじいちゃんのいつも座っていた椅子を
トランポリンのように飛びはねて遊び
壊したことがありました。
机にむかっていつも書き物をしていた
おじいちゃん
そんなおじいちゃんのうしろで
いつも縫い物をしていた
おばあちゃん
そんな思い出が一気によみがえり、
なつかしさと過去には戻れない寂しさを
感じました。
祖父母の家の柱のうえに
いまも変わらず飾られてあるふたつの絵
ひとつは美人画
もうひとつは風景画
祖父母は絵が好きだったのか、
誰か知り合いからもらったのか、
母にも私にもわかりません。
でもその絵は
私が小さなころからそこにあり
私の思い出のなかの風景に
しっかりと刻みこまれ、
そして
その絵をみるたびに
思い出がさらに細部まで
よみがえってきます。
思い出のなかになくてはならないもの
飾られてあったふたつの絵は
主のいなくなった家から
ひとつは実家の壁に
もうひとつは私のひとり暮らしの家に
いま、飾られています。
良き思い出といっしょに
いま新しい時間をいっしょに
過ごしています。